社寺建築にかける想い

 先祖を敬い、大切に想う心。自然のはたらきへの畏敬や感謝の念。先人が成し遂げてきたことに敬意をはらう気持ち。自分だけでなく他人の幸せをも願う思いやりや、あらゆるいのちへの共感。  このような価値観は、家庭や地域の人間関係…

 先祖を敬い、大切に想う心。自然のはたらきへの畏敬や感謝の念。先人が成し遂げてきたことに敬意をはらう気持ち。自分だけでなく他人の幸せをも願う思いやりや、あらゆるいのちへの共感。

 このような価値観は、家庭や地域の人間関係の中で育まれ、醸成されるものです。また、季節ごとの行事、葬儀や法要の折に、仏様や八百万の神と私たちとの間をつなぐ僧侶や神職の方から連綿と口伝えされてきた理でもあります。

 ところが昨今、世の中の急速な変化につれてこのあたりまえの価値観を見失い、そのために心の安定や平穏を得られず「自分は何者なのか」「どう生きていけばよいのか」と迷う人も多いようです。

 鎮守の森や境内の樹木に囲まれ、伝統建築技術の粋が凝縮された神社仏閣。人々が迷いや惑いの中に生きる現代だからこそ、一時日常から離れて身をおくそのような場所が必要なのではないでしょうか。緑豊かな自然の中で大きく息を吸い、昔も今も変わらぬ堂宮に向かって神仏に手を合わせ「今、ここにある自分」に立ち返る。せわしない現代の日々の生活には得がたい時間が、そこに流れているからです。

 私どもは、古くからこの山梨の地で、社寺建築に携わってまいりました。堂宮を開かれた開祖や先人の工人の想いを汲みつつ、現在社寺を守られている皆様と心を通わせて、必要な修繕や建築工事を、心をこめてさせていただいています。より多くの皆さんが足を運びたくなるお寺やお宮づくりを通して、日本の歴史風土における文化継承のお手伝いができればと願っております。

伝匠舎 石川工務所 代表取締役社長
石川重人