当時の状態を再現する保存修理
古来山梨県内で工務所を営み、古い技術を伝えて来た当社は、社寺に限らず、文化財の保存修理の仕事を多く手がけてきています。
保存修理には、単にいたんだところを改修するということではなく、当時の状態を再現し、保存するという意味合いがあります。ことに近年では、財団法人文化財建造物保存技術協会の監督、故・広瀬沸先生のお導きにより、その建物の本来の性質を引き出すような保存修理を心がけております。
みなさんにご覧になっていただきやすいところでは、塩山の駅前にある「甘草屋敷」があります。電車が塩山駅に着くと、北側にひときわ大きな甲州民家に独特の突き上げ屋根の古民家があるのですぐお分かりいただけると思います。
ここは、江戸時代に、薬用植物である「甘草」を育てて幕府におさめていた高野家の屋敷だったのを庭や周辺の建物を含めて「薬草の咲く歴史公園」として整備したところです。もとは茅葺き屋根でしたが、昭和35年の保存修理の時に火災への配慮から、銅板葺きにあらためられました。土間には、まるで本当にそこに栗の木が生えているかのように自然の形そのままの、太い栗の棟持柱がそびえています。
甲州民家独特の形を残す、地元の貴重な建物が広くみなさんに親しまれるための保存修理に携わることができて、よかったと思っています。