伝匠舎の長生き建築

2019年 初夏のご挨拶
「フローからストックの社会へ」

来年の2020年夏の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、新国立競技場をはじめとする関連施設の建設や、都市開発がさかんに行われています。新しい技術に基づき、斬新なデザインを取り入れた建物群がその姿を見せ始めていますが、これら建造物の耐用年数は、いったい何年なのでしょうか?

新国立競技場は、1964年(昭和39年)の東京オリンピックの際に建てられた国立競技場が解体されることになって新築されます。57年しかもたなかったわけです。日本の社会資本の蓄積を妨げているのは、木造では30年、鉄筋コンクリート造でMax60年といった、現代の建造物の耐用年数の短さです。持ち主かにしてみれば「もったいない」ことですし、欧米の建築物に比べ、かなり短いと言わざるをえません。

「令和」という新元号のもと、AIロボットが人の仕事に取って代わろうとしているこの日本では「ゆとりをもって豊かに生きる」理想を掲げた「働き方改革」が始まろうとしています。大事な財産であるはずの建築物を、解体と建設を繰りかえして、簡単にフローしているこの日本に、真の「ゆとり」は訪れるのか?・・・私にはやや疑問です。

耐用年数の長い社寺建築に数世紀にわたり、この山梨で取り組んできた私ども伝匠舎は、建築の長寿命化を宣言します。古建築の修復を通して学んできた木造や石造の特性に従い、今日まで学び培ってきた建築技能を結集して、100年を生き抜き抜く木造建築を、120年を生き抜くコンクリート建築を、愛でられて世紀を超えて生き抜く建築美を、後世に残し伝えていくことを、願ってやみません。

大善寺薬師堂とパルテノン神殿

世界の最先端であるために、破壊と創造を司るシヴァ神のごとく、スクラップ&ビルドを繰り返す日本社会、しかしやはり人々がゆとりをもって豊かに暮らすためにはストックが必要です。そろそろフローからストックへ!子孫の幸せのために、急いで建築の長寿命化に取り組みませんか。