古民家再生の実際

B. 古民家再生の実際

古民家再生は古民家の構造体をチェックして、これから先もう100年住めるようにすること。埃っぽかったり、暗かったり、古ぼけていたりするのを、美しく磨きあげてよみがえらせること。耐震性、寒さ対策、利便性といった現代のニーズにこたえた住まいとして十分な機能を備えること。このページでは「再生」の流れをご紹介します。

「再生できる」のが、木組みの古民家のよさ

「かわいい子には普請をさせるな」、「家は末代まで」という諺(ことわざ)からもお分かりいただけるように、古民家は最初から数世代住み継がれることを前提に、長持ちするようにつくられています。何度も建て替えることで子子孫孫にわたって住宅ローンを繰り返しいつまでもゆとりのできない私たちの日々追われる生活とは違い、古民家は代々住み継がれて悠久な日本の原風景を作ってきました。

まず大前提として、古民家は「容易に再生できる」ということがもっとも大きな特徴です。ずっと朽ちずに永続的にもつということは、この高温多湿で、地震がある日本においては難しいことです。長い生命をもつ古民家は代々の当主が必要に応じて修理や改修を繰り返すことで、維持されてきました。

まずは、家を「ほどく」

「木組み」とは、木と木とをパズルのように組み上げた構造で、順番に従えば、容易にほどく(解体する)ことができ、また組み上げることができます。それゆえ傷んだか所の修繕も容易で、間仕切りの仕方で部屋の間取りも自由に変えることもできました。フレキシブルであること、柔軟性に富むこと、これが「古民家再生」を可能にしています。

移築再生や現地再生では古民家の痛み具合が激しく、根本的な再生が必要な場合には、まずその古民家の壁を落として、いったん、骨組の状態にまで戻します。このことを「半解体」と言います。現地再生の場合ではよくこの半解体の状態で工事を進めていくことになります。

ほどいた状態で、柱や梁の痛み具合をチェックし、使えるものと使えないものとを判別します。使えないものについては、新材の代替え品を製作します。また、後世の改修で元の姿を失っている場合は、これを復し、本来の美しさを取りもでそうとする姿勢は古民家再生の基本と言われます。

移築再生などで古民家をほどく場合、柱や梁の端部に「いの一」「はの三」といった「番付」が記しますが、これは、その柱や梁が全体の軸組の中のどの位置にあるかを示す大事な記号です。

調査に基づいて設計図書を作成し、これによって木材を加工し柱や梁といった軸部材を整え、番付に従って現場で組み上げます。古材を再利用できない部分には新材も交えながら、骨組みをしっかりとつくり直しておきます。現在ではCO2 の発生をできるだけ抑えるためにも、古材はできる限り多くをリユースすべきですが、実際には再生民家の古材と新材の割合は半々といったところでしょうか。

次のページからは、「土台と屋根」「耐震性のアップ」「寒さ対策」「利便性」といったポイントに分けて、再生の細かな実際を見て行きましょう。