寒さ対策

E. 寒さ対策

「古民家には住めない…」と二の足を踏むいちばん大きな理由は、すきま風、底冷えといった言葉で表現される「冬の寒さ」かもしれません。特に幼少時代を寒い古民家で育った人ほど「夏は涼しくていいんだけど、冬の寒さはこたえる」ということをおっしゃります。しかし、工夫次第で、現状は寒い古民家であっても、冬あたたかく過ごせる家に生まれ変わらせることはできるのです。

冬の寒さをしのぐようにはできていない
日本の古民家を、どうするか

本来「夏を旨とする」のが日本の住まいのつくり方で、冬の寒さには囲炉裏にあたる、こたつに入る、綿入れ半纏などを着る、早く寝る・・など「住まい方」でしのぐ対策ぐらいしかしていませんでした。しかし、現代の日本人は昔の日本人ほど寒さに強くはないのです、古民家に住むにはそれなりの対策が必要となります。

自然に開かれた木の家のよさを活かした寒さ対策

今の「高気密・高断熱」住宅では、外と内とをはっきりと隔て、機械空調にて外界の変化に影響されない室内環境をつくるという考え方が一般的です。いわば「自然と縁を切って」暮らすという発想です。

しかし、もともとの日本の古民家のよさとは「自然に対して開かれている」ということだったのではないでしょうか? 家の中にいても風が抜ける。縁側のぽかぽかとしたあたたかさ。自然の恵みを上手に受け取り、暮らしに取り込みながら、季節をいつも感じて、日本人は生活してきたのです。

古民家再生は、「外に対して開いている」という日本の家のよさを最大限に生かしながら、同時にそのウィークポイントとなっていた点をしっかり見定め、解決する方向で進めるのが肝心です。

1. 軒の出

日本の古民家と自然とのすぐれたつきあい方のひとつに「軒の出」があります。夏の陽射しはカットしつつ、冬の低い陽射しは取り込む知恵は、現代の住まいにも生かせるコツです。

2. 蓄熱土間

冬の昼間、縁側はぽかぽか。ところが夕方以降はまた冷えきってしまうのです。この熱を生かせたら!ということで、当社では南面ガラス戸の内側にコンクリートなど蓄熱素材の土間をつくり、蓄えた熱で家をあたためるという方法をとっています。

3. 越屋根

かつては生火を焚いていた煙出しとして用いていましたが、煙突作用で夏の熱気を抜くのに有効です。冬は越屋根の窓を閉じ、最上部でダクトファンをまわすことで、薪ストーブや蓄熱土間の熱を家の中に循環させます。

4. 適度な気密性と断熱性

暖気を家の中で循環させるには、家にある程度の気密性と、しっかりとした断熱性をもたせ、あたたかい空気が放出しないようにすることが必要です。断熱材や木製サッシで、すきま風や底冷えのない家をつくることができます。家の構造としても、断熱性・気密性を守るために、外大壁・内真壁を推奨します。

冬に現地がどの程度の寒さになるのか、どの程度までの寒さを許容するか、条件によってかなりの幅をもった寒さ対策が技術的には可能です。介護の問題、子育ての問題、省エネの問題など、ご家族固有の条件によって、最終的にはお住まいになる家族がどのような環境に住まわれるのか、どこまでの寒さ対策を望まれるかという希望に応じて、方法を選択していきます。

伝匠舎では、温熱環境に配慮した古民家再生基本プラン「甲斐の舎」「甲斐の蔵」の提案をしています。詳しくはこちら

最近、省エネルギーの観点から、高機密高断熱の再生民家が増えていますが、夏冬ともに一定の環境を人工的につくったなかで暮らすことが、必ずしも最良の健康住宅ではないのはご存じのとおりです。夏は夏らしく、冬は冬らしく、ある程度の抵抗力を養いながら暮らすことも必要ではないでしょうか。