木造建築物は、火災で失われる
平成28年(1月〜12月)における消防庁防災情報室の発表によると、建物火災は20991件(内住宅火災は11354件)、住宅火災による死者は885人、出火の原因はタバコ、コンロ、焚き火の順で、驚くことに放火も少なくありません。
優良な木材に恵まれていた日本では、1945年の終戦までは、そのほとんどが木造でありました。そして、社会資本である建造物を失う最大の要因は、日本ではこの「火災」にほかなりません。ヨーロッパのごとくに組積造であったならば、どれほどの街並みや美術品が国中を満たし、飾っていたか判りません。
木造建築を「蔵型」にすることで
外部環境から家を守る知恵
日本各地を襲った大火の歴史を調べてみると、名前がつくほどの大火も数多くありますが、中でも1893年(明治26年)の「川越大火」の教訓とその復興の歴史は、模範とされ、記憶されるべきものです。すなわち、焼失したあとに再建した建物を、漆喰を塗り重ねた蔵造りとすることで、施主の財産を守ることにとどまらず、日本人の好む木造建築を「防火建築」の街並みとして後世に残し伝えてくれたのです。
火災以外にも、日本の自然災害の歴史を振り返れば、台風や地震、津波、火山の噴火、雪崩など、各地の郷土誌に記録された悲劇は数知れません。近年でもCO2の増加に伴う自然環境の変化による風雨の集中化・激化が起きていて、それは今なお進行形です。このような意味からも、室内を外部環境から守る「蔵型建築」の存在意義は高まっています。
戦争は社会資本を奪う
最大の敵
もうひとつ触れておきたいことがあります。都市にある建造物を破壊消失させる最大の要因は「戦争」だということです。歴史的な多くの大戦によって、真に多くの都市が焼尽に帰しました。かつて、山梨が誇る美しい木造建築文化の街であった甲府が、終戦間際の空襲で人為的に焼かれてしまったのは、痛恨の極みです。
戦争こそが、人命ばかりでなく私たちの社会資本をも奪い、ゆとりと幸福を奪う最大の敵であります。