5-2. 一言で日本の古建築を抹殺した言葉

「基礎と土台をアンカーボルトで緊結せよ」!建築基準法のこの一節は日本の伝統的な木造建築を一撃で殺してしまうほど威力のある言葉でした。例えば日本人の誇りである桂離宮を現状の法規で新築することはできません。限界耐力設計で可能とする意見もありますが、それに要する時間と費用を考えると真に現実的ではありません。

1945年終戦までの日本の木造建築物のほとんどは柱や梁などの軸部構造材を貫や長ホゾによって組んだ柔構造で、礎石や柱石の上に固定せずに置かれていました。これを石場建と言いますが、巨大地震が起こった時には、建物が柱一本分の範囲で動いて地震力をかわし上部構造を守るといわれています。実際に地震に遭遇した方が、建物が歩くなどと表現される現象ですが、このような地面と建築物を切り離す工法を免震構造と言います。

足元を固定された大人は子供にでも簡単に倒されてしまう如く、土台を基礎に緊結された建物には強い地震力がそのまま伝わります。この場合、建築基準法では一般的には筋交いを入れて建築物を剛体とし地震力に抵抗させますが、筋交いは地震力を局部的に伝えて二階建ての木造建築では通し柱の接合部を折ってしまうここがあります。なぜ日本の伝統建築には筋交いが使われてこなかったか、それは主要構造部を破断すると復興時の修理が容易でなくなるからです。

長い経験から培われた日本の職工の知恵であります。

剛には剛、足元を固められた建物は柔構造では地震に耐えられません、ただひたすら剛体にするのですが、この時筋交いを使用すべきではありません。耐震壁の概念が重要です、木骨土壁構造の日本の蔵のごとく壁面が一体となって地震力に抵抗するのです。

パルテノン神殿とパンテオン神殿

一言で日本の古建築を抹殺した言葉