5-1. パルテノン神殿とパンテオン神殿

アテネのパルテノン神殿の元の姿は、実は木造の切妻造りです。文明が樹を切り尽くしたことで木造建築を石造建築として写したのでしょうか、あるいは神殿が大型化することで石造が選ばれたかもしれません。パルテノン神殿が記念碑的な遺跡であるのに対して、ローマのパンテオン神殿は約1900年の歳月を経ても破損することなく現役で、その威容を誇っています。この耐久性の違いは何でしょうか?パルテノン神殿が軽い木材を石材という重く固い材料に置き換えて造ったのに対して、パンテオンは建築技術の進歩によって石材にふさわしい構造(ドーム構造)でできているからです。そこでは自然に逆らわない力の流れが建築物を力強く支えています。ローマ建築の技術力の高さには驚かされます。

近代建築の歴史にもジャポニズムはあったのではないでしょうか?例えば巨匠・丹下健三の山梨文化会館は、まるで巨大な日本の木造建築のような架構を連想させます。鉄筋コンクリートの発明によって桂離宮のような軽快で明るい空間を巨大建築物においても人類は手に入れました。しかしこれらの建造物が意外と短命です。例えば我が町の庁舎であった旧甲州市役所に目を向ければ、立派な鉄筋コンクリートの建築物がわずか47年で危険であるとされ解体されました。

パルテノン神殿

パンテオン神殿

鉄筋コンクリートによる柱梁構造(ラーメン構造)はパルテノン神殿と等しく木造建築をコンクリートで写したものです。さらに耐震補強で用いられる鉄骨のブレースさえもトラス構造という西洋の木造建築の様式です。さらにビルの免振という耐震方法も日本の伝統木工技術の石場建に他なりません。

自重が重いのに、まるで木造建築のようなコンクリート建築は、やがてパルテノン神殿と同じ運命をたどるでしょうか?それを暗示するような事故が中央道の笹子トンネルで起きました!自然の力の流れで支えるボールト構造のトンネルは何ともないのに、自然に逆らって吊った重いコンクリートの天井版はもろくも崩れ落ちたのです。

社会資本の蓄積による豊かなまちづくりを考えるとき、建築物の耐久性は重要です。例えばラーメン構造のビルなどは木造建築を重い石造に置き換えたもので構造的には不自然であり耐用年数は短いと考えられます。自然に逆らった構造は建築物の短命を招くのです。石造(コンクリート造)には石造の、木造には木造の建て方があるはずです。自然の法則に反して建築することで、社会資本が蓄積せず赤字国債が積み上がるのでは、私たちはいつまでも豊かにはなれません。必要な予算を掛け、強固に造り、時に修繕を行い、これを長く使う文化が求められています。

パルテノン神殿とパンテオン神殿

一言で日本の古建築を抹殺した言葉