民家のよさの要素の中でも「軒のつくる表情」は、かなり大きなウェイトを締める要素です。軒が深い家は、塗り壁などを保護するだけでなく、美しい。軒を深くしたり、反らせたりするためだけに、特に社寺建築では、屋根のこう配と軒裏のこう配を変えることで軒下を軽快に美しく見せるという、かなり高度な大工技術が発達しました。
ところが、軒を深くすればするほど、当然、居室には日射しが入りにくくなります。電気がなかった昔の家に住んでいた人にとっては、家の中が薄暗いのはあたりまえ。その微妙な薄暗さについて、小説家の谷崎潤一郎さんは「陰影礼賛」と評していますが、現代の生活は、隈なく明るいのが当然。外に面している居室でありながら「昼間から薄暗い」のでは、敬遠されてしまいます。
「もっと光を!」とゲーテは言ったとか。燦々と降り注ぐ、天の恵みをどう活用するかは、あなた次第。伝匠舎がそのお手伝いをします。伝匠舎では、軒の深さを大事にしながら、生活に必要な明るさを確保するために、さまざまな工夫をしています。
ニ階建ての場合、一部を吹き抜けとして、二階の上部からの光を取り込みます。薄暗くなりがちな総二階の古民家を再生する場合にとても効果的なやりかたです。二階の階高があまりなく、二階に窓をもうけても日射しを取り込みにくい場合は、思い切って軒先をガラスにすることもあります。
また、軒の一部をうんと出して、その軒下に縁側を拡大したような、三方がガラス張りのサンルームを作るというのも面白いやり方です。冬の日だまりを楽しめるだけでなく、冬場外には出せない観葉植物の置き場や、洗濯物干しにも便利です。夏は三方を開け放して屋外同様の、濡れ縁的に活用できます。
また、太陽光は、明るさという光エネルギーだけでなく、あたたかさ、ぬくもりといった熱エネルギーをもたらしてくれます。太陽光発電が流行っていますが、電気にする以前に、直射日光による日だまり、太陽光集熱で得る温水などの活用を、まず考えてみてはどうでしょう。