NHK朝ドラ「花子とアン」が全国的にも人気だそうで、ご当地の山梨県人としてはうれしい限りです。伝匠舎では、ドラマのオープンセットとなる、花子が幼い頃に住んでいたかやぶき農家の屋根を作らせていただきました。
周りの雰囲気とよくなじんでいて、新しく作ったようにはとても見えませんね。
長年住んでいる感じを出すために、伝匠舎で新しく作ったかやぶき屋根に、テレビ局の大道具さんが「汚し」をかけるんですよ。その作業をエイジングというんですね。ああ、せっかくきれいに仕上げて引き渡したのになあ・・・と、ちょっと残念なような気持ちがしましたが。
苦労された点や工夫された点を、教えてください。
いちばん困ったのは「簡単でいいから早く作って」という注文です。通常、丸太で組んだ小屋の骨組みの上に、茅の束を何重にも厚くかぶせて作りあげていくのに屋根工事だけでも二ヶ月はかかる工程なのです。それをどう省略し、かつ、屋根として見えるように成立させるか、考え込みましたね。
普段ちゃんとしたお仕事をされているだけに、力を抜くのが難しいのでしょうね。
結局、屋根下地となる板に、かやの束を薄く載せて、ビスで留めつける方法をとりました。あと、工夫といえば「キッチリきれいに葺かないで」という注文に応えるために、稲藁に麦藁を混ぜて葺きました。多少不規則な感じが出て「オンボロ」な表情が出たかなと思います。
どのあたりにあるのですか?
県立科学館の上の千代田湖をさらに奥に行ったところ、甲府市上帯名町地内、路線バスの終点付近をさらに奥に分け入ったところにあります。道は細いし、駐車できるところもほとんど無くて、車で行くのは避けたほうがよいでしょうね。見つけにくいので地元の方に聞かれてみるのが良いと思います。放映前までは、この場所情報は「極秘扱い」だったんです。それでも、観光関係のスジの方から「茅屋根だったら伝匠舎で手がけたんでしょう? どこに作ったのか、教えてくださいよ」って、けっこう、聞かれましてね。はぐらかす、っていうのも結構つらいものですよ。「花子とアン」人気の高まりで、この「花子の生家」を観光資源として活用していくという計画があるという話も聞いていますので、今後がますます楽しみです。
ほかにも、伝匠舎で手がけた建物がロケにも使われていると聞いています。またいろいろなお話を、聞かせてください。