伝匠舎命名の由来
伝匠舎という名前は、今から20年ほど前につけました。石川工務所や石川工務店というのが、山梨県内だけで5、6社もあって紛らわしいということもありましたが、読んで字のごとし、「伝統的な匠の技を伝えていく」ということを使命としてやっていこうということ考えたのです。良い職人を育てるには時間がかかる、気の長いことなのですが、やはりそこを大事にしたいと思うのです。
産業革命以来、さまざまな職種が機械化され、いかに効率よく生産をするか、ということが追求されてきました。最先端の工場を見学に行った時、そこでものを作っているのは人間ではなく明らかに機械でした。「より早く、より安く、より良く」供給することを目指した結果行き着いたのが、人間不在の生産現場だったのです。そこでは、生産効率をあげることが第一であり、誰がそこに関わっているのかは稀薄であり、突き詰めていけば「人間は要らなく」なっていくのです。人間はミスをするし、ばらつきがある。機械化を進めれば、それを均質化していくことができるということでしょうか。
建築の世界にも、ここ半世紀で似たようなことが起きてきました。「伝匠舎」という看板を掲げ、そのような流れにあえて逆行して人間復権をめざしたいと思います。あくまでものづくりの主体は人間でなければなりません。これまでの日本の伝統建築がずっとそうであったように、職人達の心意気が出来栄えに反映するような家づくりでありたいと思うのです。