風流美を愛でる 風流美の美しさを語ります

風流美とは?

「風流美」とは「風流」という言葉に「美」を足した、伝匠舎が大切にしていることを表すためにつくった、造語です。

「風流」とは、「上品な趣があること、詩歌・書画など趣味の道に遊ぶこと。先人の遺したよい流儀」という意味をもつ言葉です。たとえば、浴衣姿で蛍狩りに行く、お団子を備えてお月見するなど、季節らしさや歴史、趣味の良さなどを感じさせられる場面などで「風流だね」という具合に使われます。

一方、ものが時を経て古くなっていくことを指して「古びる」とはいいます。今では、色あせるとか、うらぶれるとか、どちらかというと後ろむきの言葉として使われがちですが「古びる」という言葉には、本来、そのようなマイナスの価値判断は含まれてはいません。「経年変化」をプラスととらえるか、マイナスととらえるか。時代の価値感が反映されるのかもしれません。「古びる」ということがプラスになるような価値感にもとづいた「古びの美しさ」に「風流」という字をあててみたのが「風流美」だととらえていただければ分かりやすいかと思います。

家づくりに関していえば、現在主流の新建材の家は、完成した直後が美しさの頂点で、あとはビニールクロスや合板やサイディングなど、時とともに劣化していく素材が多いのです。「古びること」はマイナスであり、美とは結びつかないでしょう。ところが、古民家や木の家では経年変化はプラスにはたらきます。黒光りした古民家の柱、まわりの自然と調和した集落の風景、世界遺産になっている社寺など、思い浮かべていただければ分かりますが、時を経ることによって、深み、艶、味わいなどがむしろ増していくのです。新築の時も美しいけれど、それとは別の美しさを増していくのです。これが、木や土、竹、石といった自然素材の、新建材にはない良さだと思います。

伝匠舎では、これまで「風流美(ふるび)」と題した小冊子を作ってきましたが、このたび、オンラインでも発信を始めることにしました。時間に醸されて、なお価値を増していく日本の建築の美しさを、折に触れてご紹介しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

伝匠舎 石川工務所 石川重人