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東京方面から中央本線で塩山駅に着くと、右手に銅板葺きの大きな屋根が見えてきます。甲州民家の代表的な民家として国の重要文化財にも指定されている「甘草(かんぞう)屋敷」です。江戸時代にはここで漢方薬の材料となる甘草を育て、幕府に上納していたので「甘草屋敷」と呼ばれています。
この民家は屋根の形が独特です。東西にのびる大きな屋根の中央部分がせり上がった形になっており、そこに2階、3階が立ち上がっています。学術的にいえば「切妻の大屋根の中央に突き上げた部分をヤグラと称する」という表現になるかもしれませんが、まったく解り難いのです。そこで仮にこの民家、裃(かみしも)を着た「福助」の姿によく似ていますので「福助づくり」とでも呼べばいかがでしょう。分かりやすく、かつ親しみやすいものとなるのではないでしょうか。そして縁起もいい。これだけの大きな切妻屋根の茅葺き民家は、白川郷の合掌づくり以外には例もなく、全国的に見ても大変珍しいものなのです。古くから養蚕が盛んであったことや、地理的条件で大風が吹きにくい地域だったりしたことに起因しますが、地域のなりわいと気候とが生んだ、まさに「地域の形」といえるでしょう。
「甘草屋敷」では、毎年2月から4月にかけて、雛飾りの展示をしており、それがとても好評です。屋敷の中に足を踏み入れると、まず、左手前に、栗の木の大きな大黒柱があるのが目に飛び込んできます。柱というよりは「栗の大木がそこに生えている」とでもいったような迫力です。この柱が、自然に二股に分かれた姿のまま、二階、三階を突抜け、大きな茅屋根の棟木を支えている姿はまさに圧巻です。この屋敷を訪れる人がまず感動するのは、この大木の包容力です。あるいはこのような自然のままの木を活かして家を建てた大工の心意気なのではないでしょうか。
大きな屋敷の一角には、子ども図書館も併設していますし、屋敷の庭には、当時の屋敷のさまざま付属施設もそのまま復元してあるので、庭を散策しながら当時のこの屋敷での暮らしに思いを馳せることもできます。みなさまもぜひ一度、この「福助造りの甘草屋敷」に、お出かけくださいね。
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玄関土間に圧倒的な存在感をもってそびえ立つ大黒柱
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広大な広間
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2月〜4月の雛飾りの季節には、大勢の観光客が訪れます。
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大黒柱は、二階になると、びっくりするほど荒々しい姿になります。
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養蚕の道具や、雛飾りが仕舞われています。
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二階の窓から見える景色。手前に甘草の畑が広がり、すぐ奥には塩山駅が見えています。
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三階になると、空間のない場所で棟木を支えるために、大黒柱は、さきほどとは打って変わって、細く削られています。
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甘草屋敷
〒404-0042
山梨県甲州市塩山上於曽1651
Tel:0553-33-5910
営業期間:通年
開館時間:9時〜16時30分
休館日:火曜日(祝祭日に当たる場合はその翌日)、年末年始
2月〜4月の雛飾りの展示期間は無休です。
入場料:大人300円、小人・学生200円