前回の「棟梁の家」に続き、今回は左隣の「花かげ写真館」のご紹介です。正式には「花かげ寫眞館」と、旧字体で書くのですが、ネットではわかりやすさを考慮して一般的な「写真館」という表記にしています。
この建物は、明治大正期の擬洋風建築を再現したものです。その頃の日本人が、西洋に憧れ、日本の木工技術で作ったのが、擬洋風建築です。純粋な西洋建築ではなく、そのエッセンスを取り入れ、日本人のセンスで再構成しなおしたものなので、当たり前ですが西洋に擬洋風建築はありません。
この「花かげ写真館」を眺めると、どこか懐かしさのようなものを感じると思います。それが日本人のセンスに由来するものです。対して、バッキンガム宮殿を見ても、そんな感情は沸き起こりません。
端的な違いは、スケール感に現れます。西洋建築はこんなに小さくはないのですね。日本人がつくると、自分たちの身体の大きさや、普段使っている材料や道具に合わせて、少し小さくつくります。それが、建物全体からにじみ出る「愛らしさ」につながっているのではないでしょうか。「遠くの世界への憧れ」という、気持ちが満ちているのも、それを強めていると思います。
館内では、塩山の100年の歴史を紹介するスライドショー「いにしえ写真展」も上映しています。事前に電話でご一報の上、ぜひみなさんの眼で擬洋風建築の愛らしさをお確かめください。
風流美ショールーム
花かげ写真館・棟梁の家
甲州市塩山上於曽1990番地
Tel:0553-32-2170
入場無料、要電話予約(当日可)
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左:「花かげ写真館」の洋間です。クローゼットの引戸に、細かい欄間を使ったら、なかなか落ち着いた雰囲気になりました。
右:鉄とガラスを使ったディスプレイ棚です。
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左:「花かげ写真館」では、いにしえの塩山の写真をモニターでご覧いただくことができます。
右:ライブラリーには、たくさんの写真素材やビデオが。ゆっくりとお楽しみいただけます。
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左:こんな昔の天秤ばかりもあります。昔のものは、実用のものでもどころなく愛らしいですね。
右:「花かげ写真館」のエントランスホール。ステンドグラス越しに入る明るい色の光が楽しい感じです。
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左:窓も外に開いて、ストッパーで止める形です。窓の意匠が、部屋の雰囲気を作ります。
右:諏訪の薬局から出て来た棚。奥行きが浅く、せまいスペースでも飾り棚として使えます。