風流美図鑑 風流美要素の定義集

大黒柱 daikokubashira

民家の中央付近にある最も太い柱

大黒柱が家の軸組を支える構造的にも意匠的にも大切な柱であるという例は、日本全国に見られます。その家の当主や長男のことを「一家の大黒柱」と呼ぶほどに。その重要度は高いものです。

甲州民家に大黒柱が出現したのは江戸時代後期ころと考えられますが、甲州民家においては、大黒柱の用い方が秀逸です。玄関土間を入って、履物を脱いで母屋に上がろうかというところに,大黒柱がドーンと、圧倒的な存在感をもって立っているのです。甲州の大工はそれを一種の「見せ場」として捉えていたようです。大黒柱が家の屋根を支える棟に近いところまで高く伸びているのも特徴的です。よって、小屋裏をあらわしにした家では、大黒柱と梁とが十文字に家の中心を支えるような格好になります。

伝匠舎では、古民家再生だけでなく、古材を利用した新築住宅も手がけています。その祭に、大黒柱とそれにかかる大きな梁を、解体する古民家から持って来て、新しい家に活かすということをよくします。「家の背骨ができた」ような、安定感、安心感が得られます。新材では出ないような味わい、重厚感、大らかさなどはまさに「風流美」の真骨頂といってもよいと思います。

photo_pictorial_daikoku2

玄関土間にそびえる大黒柱。この家に入る人は必ずこの前を通ります。


このコーナーの別の記事