2015年6月9日
思いで深き「大田原の家」ふたたび
栃木県大田原市にあった旧K邸、このたび規模を縮小減築して移築されました。山梨の甲州市藤木地区に移した理由は、娘さんが学生時代に星の観察会で何度かこの地を訪れていて、その時の良い印象によるとのことでした。
施主のK氏は翻訳の仕事をしていますが、時に都会を離れて、仁心の厚い田舎で執筆活動をしたいとの思いがありました、が、直接のきっかけとなったのは3・11の大震災でありました。このとき大田原にあった実家が破損、そのまま放置することができなくなり調査して解体、某建設会社の埼玉県川島作業場の倉庫に一時保管されることとなりました。
弊社に施主と設計者がはじめて来られたのは平成25年1月7日でした。施主K氏にとって、傷の一つ一つにさえ思い出のある大切な家を、できる限り昔のままに再現したいとの希望でありました。
この意を受けて、まず保管されていた部材や家具を地元にある弊社の倉庫に移動した後、実施設計が行われることになりました。実はこの設計業務には二人の建築家が関係しています。最初調査から解体までを担当していたのが上遠野公一氏です。弊社をお訪ねになった直後体調を崩されプロジェクトを離脱、代わって設計業務を担当されたのが兼松紘一郎氏です。
失われてしまった部材も数多くある中、多くの方々の努力によって工事は平成25年9月27日に着工、竣工は平成27年4月20日、1年と7か月の工程でありました。