2025年4月11日
茅葺屋根・伝匠舎の取り組み

加々美(右)と新津(左)
当社は(公社)全国社寺等屋根工事技術保存会や(一社)日本茅葺き文化協会の会員として、活動を行っている会社です。当社の茅葺職人は加々美栄(54歳)と新津侑樹(38歳)で、両人とも「主任文化財屋根茅葺士」の資格を取得しています。
2000(平成12)年、当時はまだ山梨にも二宮さん(甲州流)や奥山さん(越後流)という茅葺職人の親方がいて、文化財建造物などの工事を請け負っていただいておりました。ただ老齢化も急速に進んでいたので、元ログビルダーで当社に身を寄せていた加々美に白羽の矢が。
当時を振り返って「最初は本当に嫌でしょうがなかった…」という加々美でありますが、両親方に弟子入りして修行しながら、2005年頃には親方としても仕事を任せられるように。その後、新たに新津も加わって、二人は重要文化財などの仕事も立派に仕上げる茅葺職人に成長しました。

西湖いやしの里
2005年、富士五湖の一つ西湖のほとりに、かつて水害で流された茅葺民家集落を復元する大規模プロジェクトが起こりました。「西湖いやしの里・根場」では、筑波大の安藤邦広先生指導のもと、全国各地の茅葺職人の皆様にも応援をいただくことに。職人さん同士の交流もある中で、地元河口湖町の杉嵜さん(当時43歳)が弟子入りし、現場は茅葺き文化を伝える貴重な場所となりました。

旧八田家書院
笛吹市にある「八田家書院」は入母屋造りで、山梨に残る江戸初期の銘建築。見事な木割によるプロポーションの美しさ、細部ディテールの美しさもさることながら、自然素材で葺かれた茅葺屋根はこの上なく優美です。

八代家住宅 内観
国重文「八代家住宅」は、北杜市にある江戸後期の茅葺民家です。2018年は連日の猛暑で、茅葺作業員から「エアコンをかけた現場事務所にいるより、主屋の茅葺屋根の下にいたほうが涼しい(?!)」という発言があり確認してみると、午前11時現在の外気温は既に34.3℃、対して主屋の室内29.9℃で、約4℃ほどの温度差がありました。しばらく休んでいると、汗は引いて、時おり吹き抜ける風がたいへん心地よいのです。

重伝建 上条集落 旧中村家住宅
2021年、110番目の重伝建地区に認定された甲州市の「上条集落」。甘草屋敷(国重文)と同様の福助型の茅葺民家の集積地として貴重です。認定に向けて工学院大学の後藤治教授はじめ多くの研究者の指導をいただいて、集落内の観音堂や中村家主屋の保存修理工事を行ってまいりました。