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2026年4月1日

甲州民家における大黒柱の誕生

甘草屋敷の大黒柱(一階)

大黒柱とは、伝統的な日本家屋において構造の中心となる太い柱のこと。家の中央部の土間と床上の境目付近にあって、梁を支え家全体の荷重を担います。

一辺30㎝ほどの太さがあり、栗や欅などの強硬な木材が使われることが多いです。

甲州市JR塩山駅北口にある甘草屋敷(重文・旧高野家住宅)

大黒柱という名称は、家の富を司る大黒天をこの柱の近くに祀ったこと、また後に大黒柱そのものを神聖視したことに由来します。大黒天は五穀豊穣の神であるため、大黒柱は家族の健康と家の繁栄(福)をもたらすシンボルとされました。

甘草屋敷の大黒柱(二階)

甘草屋敷の60㎝ほどの太さがある立派な栗の木の角材ですが、二階まで達する柱頭は二股に分かれ、一部丸太の面皮がそのまま残っています。また、梁は四方からホゾがきて差し込まれ、それを込み栓で止める伝統工法で組まれています。

重要伝統的建造物群保存地区「上条集落」

上条集落内の旧中村田丸家住宅

「甲州民家に大黒柱が誕生」の舞台は、甲州市にある重要伝統的建造物群保存地区「上条集落」です。この中にある集落中最古の民家は江戸時代中期以前の1600年代建立と考えられるもので、まだ大黒柱を用いない「四つ建式」(上屋柱を2本門型に組んで立て起こす)と呼ばれる工法で建てられています。後に、これが建物の真ん中に柱が立つ大黒柱構造の民家に変化しました。

旧中村田丸家住宅内観
大黒柱(左)と上屋柱(右)

旧田丸家住宅
現状平面図 大黒柱と上屋柱

旧中村家にある大黒柱は栗材の円柱で、直径48cmの12面体です。丸刃の手斧で削られていて、使い勝手の悪い上屋柱を切り取って新たに入れられた大黒柱は、中古の部材といいながらこれ自体大変古く風格があって見応えもあり、甲州民家における大黒柱の誕生を迫力を持って物語っています。

旧田丸家住宅
小屋裏 大黒柱柱頭(中央)と上屋柱(左右)

旧田丸家住宅
復元平面図 上屋柱2本・大黒柱は無い

江戸時代中期以前の古民家は、まだ大黒柱を用いない「四つ建式」(上屋柱を2本門型に組んで立て起こす)と呼ばれる工法で建てられていました。

甲州市塩山平沢地区入り口にある野尻家住宅

野尻家住宅外観(建立当初は突上屋根は無く大きな切妻屋根)

その典型例が甲州市塩山にある野尻家住宅です。写真に見える大黒柱のような2本の柱は上屋柱(じょうやばしら)と呼ばれる柱で、ともに建物の外側から1間入った位置に立っています、これが後に日常の生活に邪魔なため、上屋柱を抜くために建物の中心に太い柱を立てることになります。これがやがて大黒柱と呼ばれることになりました。

野尻家住宅の上屋柱2本とこれを繋ぐ大梁
大黒柱無し