2025年3月10日
畠山一清翁・新座敷の移築復元工事完了

竣工外観(東南面)
旧畠山一清邸新座敷(広間茶室)は、東京都港区の畠山記念館(旧畠山一清邸)から韮崎市の大村記念公園に移築され、このたび復元工事が完了しました。2023年(令和5年)5月24日には韮崎市有形文化財に指定されています。

茶事において、客は待合いを出て木製の階段を上がって新座敷広間へ入ることができる

工事着工前の旧畠山一清邸の新座敷

竣工外観(南西面)

竣工、新座敷内観(広間茶室)。床の間を見る

竣工、新座敷内観。韮崎市内から茅が岳を眺める窓辺

新座敷と増築棟を結ぶ通路屋

作業所において関係各位打合せ
2020(令和2)年解体、格納されていた部材を組み立て復元する工事の着工は2024(令和6)年5月、完成は2025(令和7)年3月、約11か月の工程でした。
畠山一清(はたけやまいっせい/1881~1971年)は、渦巻きポンプを世に広めた(株)荏原(えばら)製作所の創業者であり、事業のかたわら即翁(そくおう)と号して能楽と茶の湯を嗜む数寄者でもありました。長年にわたり熱心に美術品の蒐集(しゅうしゅう)に努め、そのコレクションは、茶道具を中心とする日本、中国、朝鮮半島の古美術品で、国宝6件、重要文化財33件を含む約1300件にも及びます。
畠山記念館は、畠山一清の貴重なコレクションを公開するため、1964(昭和39)年に東京・白金台の閑静な地の自邸の一画に開館した私立美術館。開館してから60周年を迎え、本館改築と新館が完成し、装いも新たになりました。
このたび自邸の建物群のうちから韮崎市に移築された新座敷は、昭和27年頃に数寄屋大工の名人、木村清兵衛の高弟である坂爪清松によって、春日杉の床柱など銘木をふんだんに使用して造られた、十二畳ほどの高楼風造りの座敷。当時の茶の文化を伝える価値の高い建造物です。
また、阪急阪神グループの創業者である小林一三(韮崎市出身)と畠山一清は、茶席を通して交遊があったとされており、このたびの移築復元工事が実現されるに至った経緯には、数寄者であった二人の縁を感じずにはいられません。
今後、旧畠山一清邸新座敷(茶室)を含む韮崎大村記念公園一帯が、文化芸術の一大拠点として、また観光施設として地域が益々活性化していくことを期待しています。