2015年1月27日
日川高校で講演会~300年建築を目指して~
1月26日、日川高校講演会
「豊かな歴史文化を積み重ねた、活力ある美しい街並みを創っていきたい」伝匠舎の願いである。
東京都内にある建築物のほとんどが100年後には無くなっているなんて信じられるだろうか?国家プロジェクトであった東京オリンピックの記念碑である国立競技場が57年、赤坂プリンスホテルの高層新館がたった30年で解体処分されるなど…現代建築は驚くほど短命だ。100年後に無くなってしまう建築物にどれほどの価値があるというのか?歴史文化を蓄積しない建築物群が街を埋め尽くしていく…。代々家を立て替えて、代々住宅ローンの支払いに苦しんでいる人々がいる。恐らくそれと同じく、赤字国債を積み上げてスクラップ&ビルドを続けていく日本は、いつまで経っても貧乏国に違いない。
ローマのパンテオン神殿は約1900歳、奈良の法隆寺は約1300歳、素材と構造が純粋だからいまだに現役の建築物として損なわれず使用されている。タブーな話題としては、鉄筋コンクリートの構造物は鉄筋を入れるから長持ちしない!というのがある。建築を学ぶ者ならいつかは気づくこの矛盾だが、できるならば鉄筋を入れなくても自立している構造体を造っていきたいものである。あるいは神社の本殿の土台と基礎をアンカーボルトで緊結すると言い張る人がいる。あなたはどう思うかと聞かれたから「それならば壁には筋交いを入れて、接合部を金物でしっかり固めてください」と答えた。
伝統構法を理解しようとしない人々がいる。そのような人たちは100年も残らない建築を造っていながら、数百年永々と生き残ってきた建物を批判する。「もっと歴史に学ぶべきではありませんか!」 鎌倉の大仏殿は津波で流されたのです。もし日本の為政者が日本の歴史を重んじ、日本の歴史をもっと学んでいれば、東北の大震災でもあれほどの死者は出さずに済んだのだ。そして恐らく福島第一原発も…。これらの事象は、自然を恐れず敬わず人間の力を過信して最後に自然に打ち負かされる運命の人類の未来を暗示している。
伝匠舎は「300年建築」を目指している。建築物は後世の子孫に残す社会資本として、もっと長い時間使用するべきなのだ。建築物が世紀を超えて生き続ける条件は四つ。一つは美しいこと、一つは強いこと、一つは変化する用途に柔軟に適応すること、そしてもう一つが運のいいこと。特に日本の古い木造建築は「家は末代まで」と時の主(あるじ)がかわいい孫子に労苦を掛けたくない一心で、一世一代の普請を行ってきた。しかし栄枯盛衰、我が家の没落を迎える時には、もらいもらわれ、新たな財力のある所有者がそれを引き取り、移築されて古民家はその命を繋いできた…。
「生徒さんたちから頂いた感想」※一部抜粋
・今回の講演を通して、建築についてより興味を持ちました。自分の身近にある大善寺や甘草屋敷についてもっと調べてみたいと思いました。
・様々な目線から多くの建造物を見ることが出来て良かったです。昔の建造物の造り方が現代にも伝わっていて、それをさらにその先へつなげていくのは私たちであるということを感じました。
・古くからある美しい建築は比率やバランス、柔や剛が考えられている。また、遠く離れた地域でも同じような構造で造られているということも感動しました。この講話を聴いて「将来の進路に建築設計士もいいな」と思いました。
・講話を聴いて、これからは様々な建造物に目を向け構造なども調べてみたいと思いました。そして、自分は自分なりにやりたいことを見つけ、それを成し遂げるための努力をしようと決意しました。