2015年6月26日
名刹恵林寺を守る名門家に代官所の遺構を発見?
家の価値を見定めてほしいとの所有者からの意向を受けて出向いてみると、そこには今まで見たこともない遺構が存在しました。それは玄関正面の板腰壁の結界です。
恵林寺は代々京都五山の高僧を輩出してきた大寺院であり、往時の寺領は広大であったことが想像されますが、その地域住民を統括した寺社奉行がいて、寺の東西には代官所が置かれていたらしいのです。
とするとこの玄関の間は代官と住民が接した対面所であり、腰板の結界は代官の背後を演出する舞台装置なのかもしれません。この場合さしづめ玄関先の広場は御白洲なのでしょうか?
一般の民間建築では許されるはずもない唐破風の玄関屋根の形状といい、上段の奥の間の存在と言い、この家には他に類を見ないただならぬ気配を感じます。
恵林寺の宝物館々長の小野正文先生を訪ねお話を聞いたところ、同じような遺構が西の代官所である名家にもあるとのことで写真を一枚いただきました。これによるとまったく同じ腰板の結界があり、同じように槍を壁に架けているようです。「名刹恵林寺に東西の代官所あり!」昔の大寺院のいまは忘れ去られようとしている歴史を一瞬垣間見たような気がしました。