2016年3月30日
日本建築を通しての異文化交流
この春、桜が満開の頃の話です。ご縁があって、東京大学大学院の和田準教授と学生25名(14名のラテンアメリカの学生含む)を案内することになりました。普通のツアーでは体験できないことを…とのことで弊社に白羽の矢が。
そこで「ものづくりにおける匠」をテーマにした見学旅行の中で、日本人が古い物を大切にする心・丁寧に事を成し遂げる繊細さに触れて、自国とは違った一面を感じ取って欲しいという思いでご案内することにしました。
日本・スペイン・チリなどの名門校から集まった学生さん達。英語やスペイン語も飛び交う中、まずは伝匠舎から歩いてほど近いところにある向嶽寺からスタートです。
ちょうど総門の修復工事が行われていた時。四脚門という特異な構造や改修方法について説明を受けると興味津々。足場に上がって総門を間近で見たのも良い経験でしょう。
なお、向嶽寺という名は、神聖なる富士山を遥拝する寺という意味。本堂から中門を結ぶ軸線は南北方向に一直線ですが、中門から総門にかけての軸線は西側にズレている。これは敬うべき対象物を直視しないという日本的な感性です。この説明を外国人の学生さん達は理解してくれたでしょうか?
次は、向嶽寺から恵林寺向かう途中にある井尻の作業場です。ここでは、笛吹市御坂町にあった養蚕農家の古民家が解体され保管されていて、その立派な大黒柱を持つ建物を見学すると、柱や梁の修繕作業、小屋組に関してなどいくつもの質問が出ていました。
その後、重要伝統的建造物保存築に選定された上条集落へ。周辺を散策してから山梨名物のほうとうなど郷土料理に舌鼓を打ちました。NPO山梨家並保存会の手を借りての昼食、お口に合ったようでひと安心。
最後は、藤木の作業場に向かいました。ここには東日本大震災の津波で流されたO家の遺構が運び込まれています。被災したものの屋根と軸部材の一部は旧状をほぼとどめて残ったため、その屋根組みがここに仮組みされています。屋根の大きさはもちろん、梁や桁の材の太さに驚く一行。
最後に伝匠舎の大工職人の指導で大工道具の「カンナ」で桧の材木を削る体験をし、継手の巧妙な仕組みに驚いたところで、見学ツアーは終了です。今回の経験を活かし、自国に帰ったらぜひ、日本人ならではの感性そして日本の良さを伝えて欲しいものです。