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2023年9月22日

五重塔に学ぶこと

法隆寺の五重塔

日本では大地震が起こるたびに悪者にされる『瓦屋根』。金属板屋根に葺き替えることで屋根の重量が軽くなり、一般的にはそれだけで耐震性が増すと考えられていますが…

㈳山梨県瓦工事業連合会から、研修会で瓦の話をしてほしいと依頼があり、様々に資料を集めてみたら大変面白いことに気付きました。そこでまず、このような質問してみたいと思いますが、お解りになりますか?

質問1『奈良県で一番古い木造建築は何ですか?』
質問2『京都府で一番古い木造建築は何ですか?』

醍醐寺の五重塔

1の解答:奈良県斑鳩 法隆寺 五重塔(飛鳥時代 607年建立 国宝)築1400年経過、実は現存する世界で一番古い木造建築
2の解答:京都市伏見 醍醐寺 五重塔(平安時代 951年建立 国宝)築1060年経過、醍醐寺は太閤秀吉の花見で有名

「世界最古の木造建築、法隆寺の五重塔の屋根には瓦が載っています!1400年の長い歳月、瓦が塔を風雨から守ってきました。このことに思いを馳せるとき瓦職人の皆様には、もっと瓦に自信と誇りを持っていただいてもよいのではないかと思います。」
これが瓦工事業連合会に私が贈ったエールでありますが、話はこれで終わらずにまだ続きます。

瓦屋さんに不遜にも瓦屋根の話をする社長の石川

研修会の様子。ご清聴を感謝!

『興福寺の五重塔の話』
奈良市内で一番高い建物は興福寺の五重塔で、高さ50.1mあります。現存する日本にある五重塔では京都の東寺に次いで2番目の高さです。この塔が最初に建てられたのは奈良時代の天平年間。ところがこの五重塔は、これまでなんと5回もの消失を繰り返して来ました。

年代順に記すと
1回目は1017年…落雷による消失
2回目は1060年…中金堂の火災が燃え移り消失
3回目は1180年…平家軍による南都焼き討ちで消失
4回目は1356年…落雷による消失
5回目は1411年…ほかの塔への落雷による火が燃え移り消失
現在の五重塔は6代目で室町時代1426年頃に建立された。

興福寺の五重塔


消失した原因は全て火災で5回、その内3回は落雷によるものでした。おおかたの現代人の予想に反して、五重塔の消失の原因は意外にも地震や台風ではなく、いずれも火災でありました。重い瓦屋根を支えて高く聳(そび)え立ち、まことに不安定に見える興福寺の五重塔(国宝)は、それ以後は災難に遭うことなく約600年にも及ぶ長い時間を生き抜いて来ました。

社長の石川にとりましては、以上の史実は日本の伝統工法≪木を組む技≫の素晴らしさを改めて認識させてもらえた発見でありました。日本の伝統工法は、これからも誇りと自信を持って守られるべき技術だと考えます。ただ、火災については、今日まで失われた木造建築のいかに多かったかということを思う時、防火対策こそまず第一に考えるべき案件なのだと認識されました。

追記:法隆寺にはもう一棟、世界最古の木造建築「金堂」があり、五重塔と同じく西暦607年建立とされている。