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2023年11月11日

総ケヤキ造り書院の修保が完成

総ケヤキ造りの離れ 南東面竣工外観

こちらには、今まで見たこともない総ケヤキ造りの離れがあります。造られたのは明治37(1904)年、おそらくものすごく技量のある棟梁が、施主様の要望に応えるために、たいへん素性の良いケヤキ材を吟味して集め、多くの時間をかけて刻み、組み上げたに違いありません。

総ケヤキ造りの離れ 奥座敷竣工内観

それにしても一見して驚きました。普通はこのような書院建築の柱やカモイやナゲシには狂いの少ないヒノキ材やスギ材が使われるのですが、建物の外周部の材までもがケヤキ材でできている。しかも隙間なくピタッとついている。木材の木目はため息の出るような柾目(四方柾)です。

屋敷正門より主屋と離れを望む

小屋裏にある鏑矢によって明治37年上棟が読み取れる。棟梁名は現在不明、調査を要する

ご存じのようにケヤキ材は狂いやすいのです。しかもたいへん強い木でありますので一旦狂えば容易にそれを抑え込むことができない、これは大変難易度の高い仕事です。

柱、カモイ、ナゲシ、すべてケヤキ材

御手洗の一枚板のケヤキ戸に見られる筍(タケノコ)の引手

このような貴重な仕事を後世に伝えるために、今回の修理保存工事では屋根瓦の葺き替えと、それに伴う大屋根の野地板の張り替え、垂木や軒先化粧材の修理、内部畳下板材の張り替えと消毒、一部造作材の修理と左官工事、犬走の修理などが注意深く行われました。

大屋根の野地板の張り替え工事の様子

瓦屋根の葺き替え工事の様子

工事の着工は令和5年4月、完成は同年11月、約7か月に及ぶ工程でした。

内部畳下板材の張り替え工事と害虫消毒の様子