完成 正面外観
「天下を旅する剛気の武士(もののふ)、大刀腰に足駄(あしだ)がけ八里の岩根を踏み鳴らす」と歌われた東海道の難所・箱根八里の癒し所として、江戸の昔より甘酒茶屋はありました。
現在の甘酒茶屋も、土間の三和土(たたき)に茅葺屋根と昔ながらのたたずまいで、昔ながらの甘酒をふるまって、たくさんのお客様をお迎えしています。
「箱根の甘酒茶屋」が前回改築されたのが2009年、改築前に茶屋に使われていた古材も使いながら、昔ながらの工法と昔ながらの材料を使って大きいけれど自然に溶け込むような民家を造りました。茅葺屋根も畳200枚にもなろうかという大きさです。
完成 南西面外観
あれから15年の歳月が過ぎ、山深く霧濃き地形のためか茅屋根の腐朽も進み、このほど屋根全体を葺き替え工事(差し茅工法)によって修理することになりました。ただ一部、大欅(ケヤキ)の下にかかる屋根部分は特に腐朽が激しかったために大々的な葺き替えとなりました。
正面から見る茅葺屋根工事の様子
仮設のステージ足場から見た茅葺屋根工事の様子
13代目店主の山本聡さんは、地域の幼児や児童を現場に招いて地域学習会を開催
実際に屋根に上って茅葺屋根の体験会の様子
工事期間中、13代目店主の山本聡さんは地域の幼児や児童を現場に招いて、地域学習会や実際に屋根に上って茅の葺き替え体験会などを熱心に催され、また完成時には関係者や地元住民に感謝の意を込めて、お祝いの「餅撒き」を行いました。当日は観光客も交じって、たいへん多くの方が昔懐かしい「餅撒き」を楽しみました。
完成を祝して行われた「餅撒き」。関係者に観光客も参加して昔懐かしい「餅撒き」を楽しむ
屋根葺き替えの棟梁は伝匠舎の茅葺職人・加々美栄。数人の職人仲間にも応援をいただいて完成させました。
作業する棟梁の加々美栄
コテを使って茅葺屋根を均す作業の様子
工事の着工は令和5年10月、完成は令和6年3月、約5か月の工程でした。